2023年8月28日 (月) 08:13
高齢者では肺炎を繰り返す方がしばしばおられます。
年齢のせいだ、飲み込む力が低下している、など色々な見解がありますが、入
れ歯の存在は意外に軽視されているように思われます。
近年、入れ歯と肺炎の関連を示すデータがそろってきました。
入れ歯は毎日洗浄する必要があります。
入れ歯を毎日洗浄していないと、高齢者の肺炎のリスクが1.3倍高いというデータも存在します。
しかし、洗浄して適切に着用すれば、誤えんを減らすことができるので、
むしろ「正しく使用した入れ歯は肺炎を減らす」という見解もあります。
また、夜は入れ歯を必ず外して寝るようにしましょう。
睡眠中は唾液の分泌が減少し、細菌が増殖しやすくなるため、
入れ歯をつけたまま寝ると肺炎のリスクが2倍以上高くなることが分かっています。
2023年4月30日 (日) 16:24
「ジュース類を飲むと、歯が溶ける」という説を耳にしたことがありますがこれは本当でしょうか。
ジュース類を飲むと歯が溶けるわけではなく、
口内のpHが酸性に傾く時間が長いと、歯が溶けるというのが正確です。
ジュース類のほとんどが酸性であり、コーラはpH2.2、スポーツ飲料はpH3.8くらいとされています。
数値で見ると、ものを溶かす性質を持っています。 口内は平常時、pH7の中性に保たれています。
ジュース類自体が持つ酸や、むし歯菌が飲食物に含まれる糖を分解して作り出す酸によって、口内のpHが低くなります。
そうすると、歯の表面のエナメル質からリンやカルシウムが溶け出します。
この現象を「脱灰」と呼びます。 その後、唾液が食後30分~1時間かけて口内のpHの値を中性に戻していきます。
そうすると、溶けだしたリンやカルシウムが歯に戻ります。これを「再石灰化」と呼びます。
ジュース類を飲んで、口内のpHが酸性に傾く「脱灰」の時間が長いと、むし歯になるのです。
ジュース類のpHではなく、口内のpHが重要です。
一番よくないのは、だらだら飲んだり、食べたりすることです。チョコレートや飴をだらだらと食べ続けていると、
口内のpHが酸性優位な環境となり、むし歯になりやすくなります。
2023年3月23日 (木) 11:10
歯が染みる「知覚過敏」とは、歯の神経が何らかの原因で刺激を感知している状態。
加齢で歯肉が下がったり、歯がすり減ったり、治療済みの箇所が敏感になったりしていることなどが原因だ。
20~50代の560人を対象にした日本歯内療法学会による調査(2022年9月実施)では、
過去に歯が染みる経験がある人は65.4%で、そのうち1カ月以内に歯が染みた人は41.5%いた。
また、過去に歯が染みた人のうち、32.0%が「知覚過敏と思ったが、歯科医に虫歯とされた経験」があった。
知覚過敏が一時的な痛みであるのに対し、虫歯は慢性的でずきずきとした持続的な痛みになる。
虫歯が悪化すると歯に穴が開いたり、黒くなったりするが、初期の段階では肉眼で分かりにくく進行してしまう。
歯が染みる経験をしたときは、自己判断せずに歯科医院を受診することが大切です。
自分では完璧にブラッシングしているつもりでも、奥歯など目に見えないところは磨き残しが多い。
細かい部分の汚れは取りきれないので、歯科医院でのプロフェッショナルなケアが重要です。
医院とうまく付き合うことが長期的に歯を保つこつと言えるでしょう!
2022年11月24日 (木) 06:59
高齢者の歯と幸福に関する先行研究は少ない状況です。
本研究では、東北大学が「歯の本数」と「歯科補綴物の使用」の2つの口腔の指標と、
自己評価による幸福感の関係について調べました。
自己評価による幸福感はwell-beingの大切な指標の一つです。
2016年調査の横断研究による178,090人の高齢者の解析の結果、歯数が多いほど幸福感が高かったです。
また、歯数が20歯以下の場合では、歯科補綴物を利用しない人に比べて、利用する人で幸福感が高かったです。
歯数が20歯以上である人たちには、歯科補綴物の利用は幸福感と関係しませんでした。
この結果は、歯の喪失を防ぐこと、そして歯が少ない人では歯科補綴物を使うことが、
幸福感を上げる可能性を示唆しています。
※本研究では、歯科補綴物の使用を、入れ歯(義歯)やブリッジ(取り外しのできない義歯)や
デンタルインプラントの使用と定義しています。
歯がないまま放置せず、左右の奥歯で噛めるようにしましょう!
2022年10月13日 (木) 09:58
近年、睡眠はさまざまな病気と関係していることがわかっている。
睡眠不足になると、がん、心臓病、糖尿病、認知症、うつ病などの
リスクが高くなると報告されていて、さらには「歯周病」にもかかりやすくなるという。
睡眠不足になると、自律神経のバランスが乱れ、病原体を排除するNK細胞の活性が低下したり、
免疫システムに広く関わるIL-2というサイトカインの産生が抑制されることがわかっている。
免疫力が低下すれば、口腔内の歯周病菌が増殖しやすい環境がつくられることになる。
また、睡眠時間が短くなると唾液の量が減少する。
唾液には、口腔内の細菌や食べ物のカスを洗い流す洗浄作用や、
口腔内に侵入した細菌の活動を抑え込む抗菌作用があるため、
分泌量が減ると歯周病を招くリスクがアップする。
米国で行われた大規模研究では、睡眠時無呼吸症候群(SAS)などの睡眠呼吸障害(SDB)がある人は、
そうでない人と比べると、重度の歯周病を合併している調整オッズ比が無症状の呼吸障害で40%、
軽度で60%、中等度及び重度で50%高かった。
ほかにも、東北大学が高齢者を対象に実施した調査により、
残っている歯の本数が睡眠時間に影響することがわかっている。
同じく残っている歯が1~9本の人も、短時間睡眠のリスクが1.3倍、
長時間睡眠のリスクが1.5倍高いと報告している。
睡眠不足も歯周病も、がん、心臓病、糖尿病、認知症といった全身疾患のリスクをアップさせる。
健康長寿のためには、質の良い睡眠と口腔ケアは欠かせない。
2022年8月13日 (土) 17:43
日本小児科学会は7月21日、
フッ素入り子供用歯磨き粉の誤食による急性フッ素中毒疑いに関する傷害速報を発表した。
1歳5カ月の男児が自宅で嘔吐し、嘔吐物に歯磨き粉が少量含まれていたことから、
誤食による急性フッ素中毒が疑われた。
昨年(2021年)10月の早朝に男児が自宅で3回嘔吐し、嘔吐物に歯磨き粉が含まれていたこと、
買ったばかりの歯磨き粉が減っていたことから誤食が疑われたという。
歯磨き粉は男児の兄(2歳)が使用後に高さ約80cmの洗面台に置いたままにしており、
男児が椅子に乗って取り、誤食したとみられる。
男児は入院したが、血液検査や画像検査で異常が見られず、
飲食物の摂取が可能なことが確認されたため2日目に退院した。
フッ素入り歯磨き粉の誤食によりフッ化物と胃酸が結合しフッ化水素が形成され、
胃粘膜を刺激したことによる急性消化器症状と考えられた。
フッ素は歯質強化、虫歯予防にはとても効果があるが、
乳幼児の誤嚥には注意してうまく使いましょう。
誤食が疑われる際は、カルシウムを多く含む牛乳やアイスクリームなどを摂取することで、
胃内でフッ化カルシウムが形成され胃粘膜への刺激が防げるとしているので覚えておきましょう!
2022年7月24日 (日) 16:40
コロナ渦でスマホの使用時間が長くなり、目や肩に負担を感じる人は少なくありません。
体への悪影響はそれだけにとどまらず、コロナ禍に急増していると言われるのが「顎関節症」です。
日本顎関節学会の指導医・専門医の宮本日出先生によると
全国2500万人が顎関節に異常があると推測され、
生涯で2人に1人の割合で顎関節症にかかると言われてきましたが、
コロナ禍になり世界的に顎関節症は急増しています。
イメージしやすいあごへの負担としては
「悪い噛み癖」「食いしばり」「歯ぎしり」「硬いものを噛む」が挙げられます。
他方「これがあごへの負担になるの?」と思ってしまう負担に
「うつ伏せ寝」「頬づえ」「高い枕」「電車でのうたた寝」「爪を噛む癖」などがあります。
顎関節は強い負担でも短時間であれば耐えられるのですが、弱くても長時間かかる負担には弱いという特徴があるからです。
そして、コロナ渦になり顎関節症急増の原因の一つとして指摘されているのが「スマホの長時間使用」。
正しい姿勢の場合の下顎は、頭の真下に位置しているのであごはリラックスした状態です。
しかしスマホを操作するうちに猫背になり、下顎は頭の前方にくるので、関節の骨が前にズレてしまい顎の負担が増えます。
スマホの長時間使用は猫背や肩こり、スマホ首にも関係しているので
使用時間、頻度には気を付けましょう。
2022年4月20日 (水) 06:39
お子さんの安静時に口が開いている状態を指す「お口ぽかん」をご存知でしょうか。
長引くマスク生活から、親が子供の「お口ぽかん」に気づきにくく、
またはマスク内で息がしづらいことから「お口ぽかん」になりやすい、といった問題が浮上しています。
日常的に口がぽかんと開きっぱなしになってしまう状態を「口唇閉鎖不全症」といいます。
これは、口呼吸になってしまうため、むし歯や歯周病の原因、歯並びの悪化、
鼻の調子が悪くなるなど、様々な不調につながります。
口周りの筋肉は、普段何気なく行っている口の運動によって鍛えられています。
口周りの筋肉が未発達な赤ちゃんの時は、哺乳や指をしゃぶることによって発達を促します。
幼児期になると普段の食事や、風車を吹いたり、シャボン玉を膨らませたり、
口を使った遊びが口周りの筋肉を鍛えることに繋がります。
コロナ禍の状況ですから、衛生意識を持って行いましょう。
2022年3月2日 (水) 06:16
なぜむし歯になるのでしょうか。
それはむし歯菌がいて歯を溶かしてしまうからです。
歯磨きが十分にできないと酸によって歯が溶けてしまいます。
小さなむし歯はプラスチックを詰めたり、
型をとって小さな銀歯を入れたりして1~2回の治療で済みますが、
放置してしまうとどんどん大きくなり神経まで達してしまうことがあります。
そうすると何度も薬を交換したり、大きな銀歯をかぶせたりするようになり、
治療の回数も増え、治療費もどんどんかかってきます。
定期的に歯科医院を受診すると自分では分からなかったむし歯を発見してもらうことができ、治療も最小限で済みます。
神経を取ってしまった歯の治療を途中にしてしまうと、痛みなくむし歯が進行してしまい、
抜歯になってしまう可能性もあります。
根の中で膿んでしまうと腫れたりして治療前よりひどい痛みを引き起こすこともあります。
そのため治療は最後まで通うべきです。
そもそも治療も大事ですが、普段の歯ブラシでむし歯は予防ができます。
定期的に歯科医院を受診し、歯ブラシ指導を受けると良いでしょう。
歯ブラシ指導を受けた後は時間がたつとまた自己流に戻ってしまうことがあるため、
定期的にチェックしてもらうと、そのたびに再確認ができます。
早速かかりつけの歯科医院を受診してはいかがでしょうか。
2022年2月8日 (火) 16:48
ライオン株式会社は、20〜69歳の男女4,491名のデータをもとに、
口腔状態と主観的な風邪の引きやすさの関係を統計的に分析した結果、
口腔状態の悪さ(歯周病罹患や顎関節の不具合)と風邪の引きやすさの間に関係があることが示され、
口腔状態の悪化が風邪の罹患率を高める可能性が示唆されました。
研究の背景に新型コロナウイルス感染症の流行により、
感染症にかかりにくくするための防御機能である、身体の免疫力に対する関心が高まっています。
睡眠の質の低下や食事における栄養バランスの偏り、ストレスの高さは、身体の免疫力を低下させ、
風邪などの感染症を引き起こしやすくすることが知られています。
一方、口腔状態は、糖尿病などの全身健康と深く関係していることも知られており、
感染症に対しても、口腔粘膜は感染ルートの一つであることが示唆されています 。
また、歯科衛生士による専門的な口腔ケアを行うことで
高齢者のインフルエンザの罹患率が減少したという報告もあります 。